よくある誤解:「元請けが許可を持っているから大丈夫」

産業廃棄物の運搬現場でよく耳にする言葉があります。
「うちは下請けだから」「元請けが許可を持っているから大丈夫」 しかし、この考え方は明確な法令違反です。 廃棄物処理法では、「実際に運搬を行う者」自身が都道府県知事の許可を受けていなければなりません。
法律の原則:運搬する者に許可が必要

廃棄物処理法第14条第1項は、こう定めています。
産業廃棄物を収集し、又は運搬しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
つまり、実際にトラックで廃棄物を運ぶ下請け業者が無許可であれば、 元請けの許可があっても違法です。 この「無許可運搬」は刑事罰(5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金)の対象となります。
元請けにも及ぶ行政処分リスク

多くの元請業者が見落としがちなのは、 無許可業者に運搬を委託した場合、元請けも処分対象となるという点です。 廃掃法第12条第5項は、 「産業廃棄物の運搬又は処分を委託する者は、適正な許可を有する者に委託しなければならない」 と規定しています。
つまり、元請けは委託先(下請け)の許可を確認する法的責任を負っています。
実際にあった行政処分例

【事例1】元請が無許可下請けに委託(東京都)
| 概要 | 元請けが建設現場の廃棄物運搬を、無許可の下請け業者に再委託。 |
| 結果 | 下請けは「無許可営業」で刑事告発。 元請けは「委託基準違反」として東京都より業務停止3か月処分。 |
ポイント
元請けは「下請けが許可を持っていると思っていた」と主張したが、 許可証の確認を怠ったことが重大な過失と判断された。
【事例2】他県へ搬出した下請けが無許可(愛知県→三重県)
| 概要 | 愛知県内の業者が、三重県内の処分場まで廃棄物を運搬。 しかし、三重県での収集運搬業許可を持っていなかった。 |
| 結果 | 下請けは無許可運搬で罰金100万円。 元請けも委託基準違反で指導・改善命令を受けた。 |
ポイント
「県境をまたぐ運搬」には、それぞれの県の許可が必要。
【事例3】マニフェスト上の虚偽記載(大阪府)
| 概要 | 実際に運搬したのは下請け業者だが、マニフェストの運搬業者欄に元請けの社名を記載。 |
| 結果 | 元請け・下請け双方が行政指導を受け、元請けは信用失墜により大手ゼネコンからの取引停止。 |
ポイント
名義貸し・虚偽記載も「無許可運搬」と同等に扱われる。
元請業者が取るべき法令遵守対策

- 委託先の許可証を確認・保存する
- 有効期限・許可地域・業種区分(産業廃棄物/特管)をチェック
- 書面による委託契約を結ぶ
- 契約内容には廃棄物の種類・数量・運搬経路を明記
- マニフェストを正しく発行・管理する
- 実際の運搬業者の社名を正確に記載
- 現場担当者への教育・周知
- 「元請けの許可でOK」は通用しないことを徹底
- 定期的な委託先点検
- 許可更新日や行政処分歴の有無を確認
専門家からのメッセージ
行政処分の多くは、「確認不足」「慣習的な再委託」から起こっています。 「うちは昔からこのやり方でやってきた」という言葉が、処分理由になることも少なくありません。
元請けの皆様は、下請けの許可証・契約書を定期的に確認し、 自社が処分の巻き添えにならない体制づくりを進めましょう。
長良行政書士事務所では

- 元請け・下請け双方の法令遵守体制整備
- 許可証・契約書チェックリストの作成
- 行政指導・処分対応の相談
- 新規・更新許可申請サポート
を行っています。
無許可運搬・委託違反のリスクに心当たりのある方は、 早めに専門家へご相談ください。
長良行政書士事務所 ― 産業廃棄物処理業許可専門サポート ―
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