別ページにて一覧でご説明した産業廃棄物収集運搬業許可に関わる条件の一つである【経理的基礎】について詳細のご説明を致します。
基本的なところは同じではありますが、都道府県によって若干のローカルルールがございます。ここでは、愛知県の基準をベースにご紹介させて頂きますので、ご了承ください。
経理的基礎が求められる理由
産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物の収集運搬を的確に、かつ、継続して行うためには一定の経理的基礎を有することが条件となります。
これは、事業を行っているなかで決算が赤字であったり、法人税が未納だったりすると事業資金が不足していると考えられ、産業廃棄物を適切に処理せず、不法投棄等に及んでしまう可能性がでてくることを危惧したもので、資金が潤沢である必要まではなく、マイナスでなければ概ね問題ありません。
この経理的基礎の考え方については各都道府県で若干の違いがあります。当サイトでは愛知県をベースにしておりますので、まずは愛知県の基準を見て頂き、岐阜・三重との違いをお話ししたいと思います。
経理的基礎の確認書類
当然のことですが、経理的基礎を確認するためには、書類が必要です。
これについては、大きく4つにわけることができます。
1,営業実績(事業年度)が3年以上ある法人
2,営業実績(事業年度)が3年以上ある個人
3,営業実績(事業年度)が3年未満の法人
4,営業実績(事業年度)が3年未満の個人
基本的な必要書類は、法人・個人で同一ですが、愛知県の場合は営業実績(事業年度)が3年未満の場合、中小企業診断士または公認会計士の経営診断書が必須となります。(岐阜県も同様です。三重県のみ独自の書式があり、場合によっては中小企業診断士等の診断書は不要になります。)
法人の場合の確認書類(上記1及び3)
法人の場合は経理的基礎を確認するために以下の書類を提出することになります。
・直前3年の各事業年度における貸借対照表、損益計算書(販売費及び一般管理費の内訳、売上(又は製造等)原価の内訳を含む。)、株主資本等変動計算書、個別注記表、法人税の納税証明書(その1)、確定申告書の写し(別表1(1)、別表4)
これに加えて、営業実績(事業年度)が3年未満の場合は中小企業診断士又は公認会計士の経営診断書が必要です。
※都道府県によっては、公認会計士の作成した経営診断書を認めていないところもありますのでご注意ください。
個人の場合の確認書類(上記2及び4)
続いて個人事業主の場合です。
決算書が資産に関する調書(様式第6-2(第9面))、直前3年の所得税の納税証明書(その1)、確定申告書の写し(第1表)、青色申告の場合は直前事業年度の貸借対照表
こちらも同じく営業実績(事業年度)が3年未満の場合はこれに加えて、中小企業診断士又は公認会計士の経営診断書が必要です。
経理的基礎の判断は何を見るか?
経理的基礎があるかどうかを判断するにあたって、お役所が何を見ているか?も重要なポイントです。
法人の場合
これも法人と個人で確認するポイントが変わってきますので、それぞれで解説していきます。
直前事業年度の自己資本比率
自己資本比率とは、総資本(総資産)に占める自己資本(資産)の割合で、
自己資本比率=自己資本(純資産)÷総資本(負債+純資産)×100の計算式で求められます。
産業廃棄物収集運搬業許可にあたっては、この自己資本比率が10%を超えているかどうか?が一つの大きな基準となります。
10%を超えていれば、中小企業診断士等の診断書が不要になる場合がほとんどです。
10%未満になってくると、ほぼ診断書が必要になり、0%未満(いわゆる債務超過の状態)になってくると診断書が必須又は不許可となってしまいます。
新規の申請であれば申請時までに整え、更新の場合は更新の3期前から準備をしておくと許可の更新がスムーズに行きます。
※蛇足ではありますが、少しでも自己資本比率を高めるためには融資ではなく補助金や助成金等をうまく活用して返済の必要のない資金を準備しておけるようにするとギリギリになって焦らずにすみます。
弊所では、新規または更新の許可申請をご依頼頂いた事業者様には社会保険労務士さんと組んで補助金や助成金についてもアドバイスをさせて頂いております。
直前3年間の経常利益金額等の平均値
自己資本比率は直前の事業年度でしたが、経常利益については直前3年間の平均値となります。
逆に言うと、直前の事業年度だけ黒字に持って行っても3期平均が赤字では許可申請時にマイナスになってしまうということです。
直前の事業年度の経常利益金額等
直前3期だけではなく、直前期の経常利益金額等についても審査のポイントになります。
積み替え保管の有無によって経理的基礎の見方は変わってきます。基本的には積み替え保管ありの場合は厳しくなると考えて頂いて間違いありません。
以下は愛知県の場合の一覧表です。この表に基づいて診断書が必要かどうか?許可が通るかどうか?を審査されるとお考えください。
許可申請の種類 | 直前事業年度の自己資本比率 | 直前3年間の経常利益金額等の平均値 | 直前事業年度の経常利益金額等 | 行政処分の内容 | ||
収集運搬業 | 処分業 | |||||
積保なし | 積保あり | |||||
全て | 10%以上 | プラス | プラス | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 |
プラス | マイナス | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 | ||
マイナス | プラス | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 | ||
マイナス | マイナス | 必要時診断書 | 必要時診断書 | 必要時診断書 | ||
0%以上 10%未満 | プラス | プラス | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 | |
プラス | マイナス | 原則基礎認定 | 診断書 | 診断書 | ||
マイナス | プラス | 原則基礎認定 | 診断書 | 診断書 | ||
マイナス | マイナス | 診断書 | 診断書 | 診断書 | ||
0%未満 | プラス | プラス | 必要時診断書 | 診断書 | 診断書 | |
プラス | マイナス | 必要時診断書 | 診断書 | 診断書 | ||
マイナス | プラス | 診断書 | 診断書 | 診断書 | ||
新規・変更 | 0%未満 | マイナス | マイナス | 不許可 | 不許可 | 不許可 |
更新 | 0%未満 | マイナス | マイナス | 診断書 | 診断書 | 診断書 |
個人の場合
個人の場合は決算書がありませんので、自己資本比率という考え方もありません。では、何をもって審査をするのか?というと以下の2点です。
直前事業年度の資産状況
負債が資産を上回っていないか?の判断になります。
ここで、資産状況については、「資産に関する調書」という申請書の様式に基づいて判断されることになります。
直前3年間の所得税の納税状況
もう一つの指標は納税状況です。納税をしているかどうかは経営が黒字か赤字かの判断になります。黒字であれば納税しているでしょうから、それを完納していれば問題ありません。
負債が資産を超えていなければ3年のうち1年でも納税していれば原則OKです。
逆に負債が資産を超えてしまっている場合は、要注意です。
個人の場合の確認表です。
許可申請の種類 | 直前事業年度の資産状況 | 直前3年間の所得税の納税状況 | 行政処分の内容 | ||
収集運搬業 | 処分業 | ||||
積保なし | 積保あり | ||||
全て | 資産≧負債 | 毎年、納税している | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 | 原則基礎認定 |
資産≧負債 | 納税していない年あり | 原則基礎認定 | 診断書 | 診断書 | |
資産<負債 | 納税している年がある | 診断書 | 診断書 | 診断書 | |
新規・変更 | 資産<負債 | 毎年、納税していない | 不許可 | 不許可 | 不許可 |
更新 | 資産<負債 | 毎年、納税していない | 診断書 | 診断書 | 診断書 |
一番細かくかつ分かりやすく公表しているのが愛知県でしたので、そちらの表を元に説明しましたが、最終的な判断は審査する行政庁によって変わります。
一番分かりやすいのは自己資本比率を上げて、経常利益をプラスに持って行くということです。ただ、そうならない(できない)時もあると思います。
そうなったときにすぐに諦めず、ぜひ一度ご相談ください。
また、ご不安が事業者様はぜひ、申請(更新)の3年前からご相談ください。御社の顧問税理士様と許可が取れるように連携させて頂くことも可能です。
少しでも税金を抑えたいから・・・と考えるよりも許可が取れる(更新できる)ことによって生み出される利益を考えることも重要です。
税務の専門家ではありませんが、許認可の専門家として、税務の専門家とタッグを組んで進めることは可能です!
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